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管理職が育たない会社の共通点

「管理職が育たない。」

中小企業の経営者から、非常によく聞く言葉です。

しかし実際には、「育っていない」のではなく、そもそも“管理職として機能できる状態になっていない”ケースが少なくありません。

プレイヤーとして優秀だった社員を昇格させた。
長年会社に貢献してきた。
現場をよく知っている。

それでも、管理職になった途端に機能しなくなる。

部下指導を避ける。
問題を抱え込む。
判断できない。
会議では何も言わない。
部門の数字にも責任を持たない。

すると経営者は、「最近の管理職は弱い」と感じ始める。

しかし、本当にそうなのでしょうか。

実務上、管理職が育たない会社には、かなり共通した特徴があります。

そしてその多くは、個人能力の問題というより、“会社の構造”に起因しています。

■ 「管理職の仕事」を定義していない

まず最初に起きているのが、ここです。

多くの中小企業では、会社側が管理職に何を期待しているのかを整理できていません。

例えば社長に、「管理職に求める役割は何ですか」と聞くと、

  • 部下をまとめてほしい
  • 現場を回してほしい
  • 自覚を持ってほしい
  • 数字を見てほしい

といった言葉は出てきます。

しかし、それ以上は曖昧なまま止まります。

期待は存在する。
けれども、定義が存在していない。

結果として、管理職本人は、

  • どこまで判断してよいのか
  • 何に責任を持つべきか
  • 何を優先すべきか

を理解できないまま現場に立つことになります。

これでは、機能不全が起きるのは当然です。

■ 「管理職=偉くなった人」になっている

中小企業では、管理職昇格が“ご褒美”として扱われることが多々あります。

長く勤めた。
売上を上げた。
現場で頑張った。

だから昇格させる。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。問題は、昇格後に“役割転換”が行われないことです。

プレイヤーと管理職では、求められる能力がまったく違います。

プレイヤー時代は、

  • 自分が成果を出す
  • 自分が動く
  • 自分が処理する

ことが求められます。

一方、管理職になると、

  • 部門全体を見る
  • 他人を通じて成果を出す
  • 人を育てる
  • 優先順位を決める
  • 判断する

これが必要になります。

しかし、多くの会社では、この切り替えが行われないまま放置されています。

結果として、管理職は「一番仕事ができるプレイヤー」のまま止まります。

部下育成より、自分でやった方が早い。
問題が起きても、自分で抱え込む。
結果として、部門全体は育たない。

これは、管理職本人だけの問題ではありません。
会社側が、“役割の変更”を支援していないのです。

■ 「判断」を経験させていない

管理職が育たない会社では、意思決定が経営者に集中しています。

部長でも判断しない。
課長でも決めない。
結局、最後は社長確認になる。

この状態が長く続くと、管理職は“考えなく”なります。

なぜなら、考える必要がないからです。

中小企業では、経営者が非常に優秀です。
判断も早い。
現場も分かっている。
数字にも強い。

その結果、現場は「社長待ち」になります。すると、管理職は育たない。

実際には、能力がないわけではありません。“判断経験”が不足しているのです。

管理職は、座学では育ちません。

  • 判断して
  • 失敗して
  • 修正して
  • また判断する

この繰り返しの中でしか育ちません。

多くの会社では、失敗を許容できない。結果として、経営者が全部抱える。

そして、「管理職が育たない」と悩む。

構造としては、かなり矛盾しています。

■ 管理職が疲弊している会社も多い

最近特に増えているのが、「管理職になりたがらない」問題です。

これは単なる価値観変化ではなく、現実に、管理職の負荷が極端に高くなっています。

  • 数字責任
  • 労務管理
  • ハラスメント対応
  • メンタル不調対応
  • 若手育成
  • コンプライアンス
  • 業務改善

求められるものは増えています。

しかし、権限や支援は増えていないままです。

結果として、「責任だけ重い役職」になる。

これでは、管理職候補が減るのは当然です。

さらに問題なのは、多くの管理職が“孤立”していることです。

部下の悩みは受け止める。
しかし、自分の悩みを話す場所はない。

中間管理職という言葉どおり、上と下に挟まれながら、現場を回し続ける。

その状態で、「もっと主体性を持て」と言われても、限界があります。

■ 必要なのは「管理職教育」ではない

ここで、多くの会社が研修を検討します。

もちろん、研修自体は重要です。

しかし、実務上は、研修だけで管理職が変わることはほとんどありません。

なぜなら、問題の本質は知識不足だけではないからです。

本当に必要なのは、

  • 役割定義
  • 権限整理
  • 判断機会の提供
  • 定期的なフィードバック
  • 経営側との継続的な対話

です。

つまり、“管理職が機能できる構造”を作ること。

ここを変えずに、「管理職研修をやっている」で終わると、多くの場合、現場では何も変わりません。

むしろ、研修内容と現実のギャップによって、現場が白けることすらあります。

■ 管理職問題は、会社の縮図である

管理職が育たない会社では、実は組織全体も止まっています。
・判断が集中している
・情報共有が弱い
・会議が機能していない
・責任範囲が曖昧
・人材育成が属人的
つまり、管理職問題とは、“会社全体の構造問題”なのです。
だからこそ、単に「良い管理職を採用したい」という話では終わらない。
必要なのは、管理職が機能できる組織状態を作ることです。

管理職が育たない原因は、本人の能力不足だけではありません。
役割が曖昧なまま昇格し、判断経験を積めず、責任だけが増え、支援も不足している。
そうした構造の中で、多くの管理職は疲弊しています。
だからこそ必要なのは、「もっと頑張れ」という精神論ではありません。
管理職に何を求めるのか。
どこまで任せるのか。
どのように支えるのか。
それを、会社として整理することです。
管理職は、自然には育ちません。
しかし、適切な構造の中では、確実に育っていきます。

この記事を書いた人

社会保険労務士 / 中小企業診断士

谷中 憲

(たになか あきら)

中小企業にて経営企画部門と総務部門のマネージャーとして組織運営の最前線で実務経験を積む。その後、社会保険労務士および中小企業診断士の資格を取得し、経営・人事・広報の専門知識を体系的に習得。現在は経営・人事オフィス畔を設立し、中小企業の経営課題解決に取り組んでいる。企業の内側に入り込み、現場の実績を深く理解した上で、実務的で実現可能な解決策を提案することを信条としている。

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