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会議で決まったことが、なぜ実行されないのか

「会議では決まったはずなのに、なぜか進んでいない。」

このような状況は、多くの会社で起きています。

会議の場では、確かに議論した。
方向性も確認した。
誰も反対しなかった。
議事録にも残っている。

それなのに、次の会議で確認すると、ほとんど進んでいない。

担当者は「まだ着手できていません」と言う。
管理職は「現場が忙しくて」と説明する。
社長は「前回決めたはずだ」と苛立つ。
そして、再び同じ話が会議で繰り返される。

このような会議が続くと、会社全体に諦めの空気が広がります。

「どうせ決めても進まない」
「また同じ話になる」
「結局、最後は社長が言わないと動かない」

この空気は、組織にとって非常に危険です。

会議で決まったことが実行されない会社は、単に担当者の意識が低いわけではありません。多くの場合、決め方、任せ方、確認の仕方、責任の置き方に問題があります。

つまり、実行されない原因は、会議後にあるのではなく、会議の中にすでに存在しているのです。

■ 「決まったつもり」になっているだけ

まず確認すべきことは、本当に決まっていたのか、という点です。

会議の場では、参加者全員が何となく同意したように見えることがあります。

「この方向で進めましょう」
「いったん対応していきましょう」
「次回までに整理しましょう」
「各自確認しておいてください」

このような言葉は、会議の中でよく使われます。

しかし、これらは実際には何も決めていないことがあります。

誰がやるのか。
何をやるのか。
いつまでにやるのか。
どの水準までやるのか。
完了の状態をどう判断するのか。

ここまで決まっていなければ、それは「決定」ではありません。単なる方向性の確認です。

方向性の確認にも意味はあります。大きな方針を共有する場面では必要です。しかし、それを実行に移すには、具体的な行動に落とし込む必要があります

会社の会議では、この「方向性」と「実行事項」が混ざっていることが少なくありません。

会議では大きな話をする。
しかし、最後に具体的な行動まで落とさない。
その結果、参加者はそれぞれ違う解釈で会議室を出ていく。

社長は「決まった」と思っている。
管理職は「検討することになった」と思っている。
担当者は「誰かがやるのだろう」と思っている。

このズレが、実行されない原因になります。

会議で決まったことが進まないとき、最初に疑うべきなのは、担当者のやる気ではありません。
そもそも、実行できる形で決まっていたのかどうかです。

■ 担当者は決まっているが、責任者が決まっていない

次に多いのが、担当者は決まっているが、責任者が決まっていない状態です。

会議で「この件は営業部で対応します」「総務で整理します」「現場で確認します」と決まることがあります。

一見すると担当が決まったように見えます。

しかし、部署名やチーム名だけが決まっても、実行責任は曖昧なままです。

営業部の誰が進めるのか。
総務の誰が判断するのか。
現場の誰が取りまとめるのか。
最終的に誰が完了を確認するのか。

ここが決まっていなければ、仕事は動きません。

組織では、「みんなの仕事」は、最終的に誰の仕事でもなくなることがあります。

全員が関係者である。だからこそ、誰かが進めるだろうと思う。
しかし、誰も主担当として引き受けていない。

特に部門をまたぐ課題では、この傾向が強くなります。

営業と制作。
現場と管理部門。
経営企画と各部署。
本社と拠点。

複数の部署が関係する課題ほど、責任の所在は曖昧になります。

だからこそ、会議では「担当部署」だけでなく、「責任者」を明確にする必要があります。

責任者とは、すべてを一人で実行する人ではありません。
進捗を管理し、関係者を動かし、必要な判断を求め、完了まで持っていく人です。

この役割が曖昧なままでは、どれほど重要な課題でもタスクが消化されることはありません。

■ 実行するための時間が確保されていない

会議で決まったことが実行されない理由として、意外に見落とされるのが”時間”です。

会議では、新しい課題や施策が決まります。

採用ページを見直す。
評価制度を検討する。
業務フローを整理する。
顧客別の採算を確認する。
資金繰り表を更新する。
会議資料の様式を変える。

どれも必要なことです。

しかし、それを実行する時間は、どこにあるのでしょうか。

多くの会社では、既存業務がすでに詰まっています。日常業務、顧客対応、納期対応、社内調整、突発対応。そこに新しい施策が追加される。

しかし、既存業務は減っていない。
人員も増えていない。
優先順位も変わっていない。

この状態で「やってください」と言われても、現場は動けません。

担当者が怠けているわけではありません。
実行する余白がないのです。

経営者や管理職は、会議で新しい施策を決めるとき、同時に「何をやめるのか」も決める必要があります。

何かを始めるなら、何かを減らす。
優先順位を上げるなら、別の業務の優先順位を下げる。
短期間で成果を求めるなら、応援体制を組む。

これをしないまま施策だけを増やすと、現場には未完了のタスクが積み上がります。

そして、次の会議で「進んでいません」と報告される。

これは、現場の問題であると同時に、経営管理の問題です。

会議で決まったことを実行させたいなら、実行するための時間と優先順位まで設計しなければなりません。

■ 「重要だが急ぎではない仕事」が後回しになる

会議で決まる仕事の中には、重要だが緊急ではないものが多くあります。

人材育成。
業務改善。
採用体制の見直し。
評価制度の整備。
管理会計の導入。
マニュアル作成。
DX化の準備。

これらは、会社にとって重要です。
しかし、今日中に対応しなければ顧客から怒られるわけではありません。明日やらなければ支払いが止まるわけでもありません。

そのため、日常業務に押されて後回しになります。

中小企業では、目の前の仕事が常に優先されます。顧客対応、納期、請求、支払い、採用、労務トラブル。どれも放置できないものです。

その中で、将来のための改善活動は後回しになりやすい。

これは自然なことです。
しかし、放置してよいことではありません。

重要だが急ぎではない仕事を進められない会社は、少しずつ弱くなります。

人材育成を後回しにすれば、数年後に管理職が不足します。
業務改善を後回しにすれば、非効率が固定化しコストが増加します。
採用体制の見直しを後回しにすれば、人手不足が慢性化します。
管理会計を後回しにすれば、利益構造が見えないままになります。

会議で決まったことが実行されない背景には、この「重要だが急ぎではない仕事」の扱いがあります。

本当に実行するなら、会議で決めるだけでは足りません。
カレンダーに入れる。
担当者の時間を確保する。
進捗確認の場を設ける。
短期の成果ではなく、一定期間の積み上げとして管理する。

ここまでしなければ、重要な仕事は日常業務に飲み込まれます。

■ 管理職が「実行管理」をしていない

会議で決まったことを実行に移すうえで、管理職の役割は非常に重要です。

しかし、多くの会社では、管理職が実行管理を十分に担えていません。

管理職自身がプレイヤー業務に追われている。
部下のタスク状況を把握できていない。
会議で決まった事項を部署内に落とし込めていない。
進捗確認が次回会議まで行われない。
遅れが出ても、早期に手を打てない。

この状態では、会議でどれだけ良い決定をしても、実行は止まります。

実行管理とは、「やれ」と言うことではありません。

何をいつまでにやるのかを確認する。
途中で詰まっていないかを見る。
必要な情報や協力者を用意する。
優先順位を調整する。
完了状態を確認する。

これらを行うことです。

ところが、管理職自身がその役割を教えられていないことがあります。

現場で成果を出してきた人が、そのまま管理職になる。
しかし、部下を通じて仕事を進める方法を学んでいない。
進捗管理の仕組みもない。
タスクを分解する習慣もない。

その結果、管理職は会議で決まったことを「各自で進めておいてください」と伝えるだけになります。

これでは、実行管理とは言えず、管理の放棄と言わざるを得ません。

会議で決まったことが実行されない会社では、管理職が悪いというより、管理職に実行管理の役割を持たせていないことが多いのです。

管理職に何を管理させるのか。
どの会議の決定事項を、どのように部署内へ落とすのか。
進捗はどの頻度で確認するのか。
遅れた場合に、誰がどう支援するのか。

この設計が必要です。

■ 進捗確認が「責める場」になっている

会議で決まったことを実行するには、進捗確認が欠かせません。

しかし、進捗確認の仕方を誤ると、組織はかえって動かなくなります。

よくあるのは、進捗確認が「責める場」になっている状態です。

「なぜできていないのか」
「前回決めたではないか」
「いつになったら終わるのか」

このような確認が続くと、担当者は正直に報告しにくくなります。

遅れていることを隠す。
問題を小さく見せる。
できていない理由を言い訳のように説明する。
本当は支援が必要なのに、言い出せない。

こうなると、進捗確認は機能しません。

本来、進捗確認は、責任追及のためではなく、早期に問題を発見するためのものです。

予定どおり進んでいるのか。
遅れているなら、原因は何か。
人手が足りないのか。
情報が不足しているのか。
判断待ちなのか。
他部署の協力が必要なのか。

これを確認し、必要な手を打つ。

この姿勢がなければ、進捗確認は単なる詰問になります。

もちろん、責任を曖昧にしてよいわけではありません。やると決めたことを放置してよいわけでもありません。

しかし、実行を進めたいのであれば、「誰が悪いか」よりも「どこで止まっているか」を見る必要があります

進捗確認が責める場になる会社では、問題の発見が遅れます。
進捗確認が支援の場になる会社では、問題が早く見つかります。

この違いは、実行力に直結します。

■ 議事録はあるが、実行リストがない

会議で決まったことが実行されない会社では、議事録は存在していても、実行リストがないことがあります。

議事録には、会議で話した内容が書かれています。
発言、経緯、報告事項、検討内容、次回への持ち越し。

これは記録としては重要です。

しかし、実行管理に必要なのは、議事録だけではありません。

必要なのは、実行リストです。

何をやるのか。
誰がやるのか。
いつまでにやるのか。
現在どの状態なのか。
完了条件は何か。

これが一覧になっていなければ、会議で決まったことは埋もれていきます。

特に会議が多い会社では、各会議でさまざまな宿題が出ます。営業会議、管理職会議、プロジェクト会議、経営会議。それぞれで決まったことが、担当者の頭の中やメール、議事録の中に分散します。

その結果、誰も全体を管理できなくなります。

実行される会社では、会議後の管理がシンプルです。

決定事項と未決事項を分ける。
宿題を一覧化する。
担当者と期限を明記する。
次回会議で最初に確認する。
完了したものは消す。
止まっているものは理由を確認する。

難しいことではありません。

しかし、これを徹底している会社は意外に多くありません。

会議の価値は、議事録の丁寧さではなく、会議後に何が動いたかで決まります。

議事録を作ることが目的になっているなら、見直す必要があります。
会議で決まったことを動かすためには、議事録よりも実行リストが重要です。

■ 社長が最後に巻き取ってしまう会社は、実行力が育たない

会議で決まったことが進まないとき、最終的に社長が巻き取ってしまう会社があります。

担当者が動かない。
管理職が進められない。
期限が迫る。
結局、社長が判断し、指示し、場合によっては自分で処理する。

短期的には、それで仕事は進みます。

しかし、これを繰り返すと、組織の実行力は育ちません。

社員は「最後は社長が何とかする」と感じます。
管理職は「社長確認がないと進めにくい」と考えます。
担当者は「自分が最後まで持ち切らなくてもよい」と学習します。

これは、社長にとっても危険です。

管理職が育たない。
責任から逃げる社員が増え、主体性が弱くなる。
会議で決めても、結局社長が動かす構造になり、社長の仕事が増え続ける。

この状態では、会社はいつまでも社長依存から抜け出せません。

もちろん、経営者が関与すべき場面はあります。重要な判断、リスクの大きい意思決定、会社方針に関わる事項は、経営者が責任を持つべきです。

しかし、すべてを社長が巻き取ってしまえば、組織は経験を積めません。

実行力を育てるには、任せた仕事を最後まで持たせる必要があります。

途中で支援する。
必要な判断は助ける。
しかし、すぐに取り上げない。
結果を確認し、次に活かす。

この積み重ねが、管理職や社員の実行力を育てます。

■ 実行される会社は、決めた後の設計がある

会議で決まったことが実行される会社は、会議中だけでなく、会議後の設計があります。
決定事項を具体化する。
担当者を明確にする。
期限を決める。
実行に必要な時間を確保する。
進捗確認の場を設定する。
遅れたときに支援する。
完了したかどうかを確認する。
これらが一連の流れとして整っています。
つまり、会議が「話し合いの場」で終わっていません。
会議が、実行管理の起点になっています。
一方、実行されない会社では、会議が会議で完結しています。
話して終わる。
共有して終わる。
議事録を作って終わる。
次回また確認する。
これでは仕事は動きません。
実行される会社に必要なのは、特別な仕組みではありません。
決めたことを動かすための基本動作です。
しかし、この基本動作を徹底するには、会社としての姿勢が必要です。
会議の目的は何か。
決めたことを誰が責任をもって行うのか。
期限を守るとはどういうことか。
進捗遅れをどう扱うのか。
管理職は何を管理するのか。
ここが曖昧なままでは、実行力は高まりません。
会議で決めることよりも、決めた後に動かすことの方が重要です。

会議で決まったことが実行されない原因は、担当者の意識だけではありません。
様々な要因がが積み重なって、会議で決まったことは止まります。


会議を開くことは簡単です。
話し合うこともできます。
方向性を確認することもできます。
しかし、会社を変えるのは、会議そのものではありません。
会議の後に実行された行動です。
だからこそ、会議で何を話すかだけでなく、会議後に何が動くかを設計する必要があります。


決める→任せる→進める→確認する→支援する→完了させる


この流れがあって初めて、会議は会社を前に進める道具になります。
もし、毎回同じ議題が会議に上がっているのであれば。
もし、決まったはずのことが進んでいないのであれば。
もし、最後はいつも社長が巻き取っているのであれば。
それは、会議の問題ではなく、実行管理の問題かもしれません。
会議を変えることは、会社の実行力を変えることです。
そして実行力のある会社は、決めたことを放置しません。
小さくても、確実に前へ進めます。

この記事を書いた人

社会保険労務士 / 中小企業診断士

谷中 憲

(たになか あきら)

中小企業にて経営企画部門と総務部門のマネージャーとして組織運営の最前線で実務経験を積む。その後、社会保険労務士および中小企業診断士の資格を取得し、経営・人事・広報の専門知識を体系的に習得。現在は経営・人事オフィス畔を設立し、中小企業の経営課題解決に取り組んでいる。企業の内側に入り込み、現場の実績を深く理解した上で、実務的で実現可能な解決策を提案することを信条としている。

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